レンズのマルチコーティングの仕組みと歴史

レンズのマルチコーティングの仕組みと歴史

カメラの初心者

「マルチコーティング」って何ですか?

カメラ写真マニア

レンズの表面に反射防止膜をコーティングすることだよ。これによって、レンズの表面反射が減って透過率が上がり、レンズ表面が緑色に見えるようになるんだ。

カメラの初心者

最初に開発したのはどこの会社ですか?

カメラ写真マニア

ミノルタ(現コニカミノルタ)だよ。

マルチコーティングとは。

一眼レフカメラや写真において、「マルチコーティング」という言葉があります。レンズの表面には、反射を抑える「コーティング」処理が施されています。

初期には、フッ化マグネシウムなどの単層コーティングが使われていましたが、ミノルタ(現コニカミノルタ)は「アクロマチックコーティング」を開発しました。これは2層のコーティングを重ねることで、レンズ面の反射率を大幅に低減し、透過率を高めました。その結果、レンズ表面が緑色に見えました。

また、カール・ツアイスも以前から複数の層をコーティングする技術を持っていました。その後、ペンタックスは7層のコーティングを施した「スーパーマルチコーティング」(SMC)を、カール・ツアイスは独自の色彩再現力を持つ「T*コーティング」などを開発しました。

現在では、マルチコーティングがレンズの定番となっています。

コーティングの仕組み

コーティングの仕組み

コーティングの仕組みレンズのマルチコーティングは、レンズの表面に特定の厚さの物質を複数の層にわたって堆積させることで機能します。各層には個別の屈折率があり、特定の波長の光を干渉させて低減します。この干渉は、レンズの表面で反射する光を減らし、透過率を高めることで画像の明瞭度とコントラストを向上させます。また、マルチコーティングは過剰なレンズフレアやゴーストを抑制し、画像のシャープネスや鮮やかさを維持します。

マルチコーティングの起源

マルチコーティングの起源

レンズのマルチコーティングの起源

レンズのマルチコーティングの誕生は、1935年にアレック・ハーバート氏が特許を取得したシングルレイヤー「ブルーム」コーティングまでさかのぼります。このコーティングは、レンズのガラス表面にフッ化マグネシウムを蒸着することで、反射を抑えました。その後、1945年にセオドア・スミスが複数の層を組み合わせたマルチコーティングを開発し、反射をさらに低減させました。この技術は、第二次世界大戦中の航空機用レンズの製造に活用され、その後、写真用レンズにも広く使用されるようになりました。

アクロマチックコーティングの登場

アクロマチックコーティングの登場

アクロマチックコーティングの登場

18世紀半ばになると、レンズの光の屈折率のばらつきを低減することにより、色収差を低減するコーティングが開発されました。このコーティングは「アクロマチックコーティング」と呼ばれ、単一の材料ではなく、屈折率の異なる2つの材料を組み合わせたものでした。これにより、さまざまな色の光がレンズを通過するときの屈折率の違いを補正することができました。アクロマチックコーティングは、望遠鏡や顕微鏡などの光学機器のパフォーマンスを大幅に向上させました。

SMCとT*コーティングの開発

SMCとT*コーティングの開発

SMC(Super Multi Coating)とT*コーティングの開発

1971年、ペンタックスは、レンズの光透過率とコントラストを飛躍的に向上させる業界初のSMC(Super Multi Coating)を開発しました。この画期的なコーティングは、反射防止膜を多層に重ねることで、レンズを通過する光の透過率を99.8%以上に高め、フレアやゴーストを効果的に抑制しました。

同様に、ライカ社は1989年にT*コーティングを導入しました。このコーティングは、航空宇宙産業で使用されている多層インターフェレンスコート技術を採用し、波長400~700nmの可視光の反射率を0.2%未満に抑えました。T*コーティングは、SMCと同様に、レンズの性能を大幅に向上させ、クリアで鮮やかな画像を提供しました。

現在のマルチコーティング技術

現在のマルチコーティング技術

現在のマルチコーティング技術は、さまざまな光の波長に対する透過率と反射率を制御することで、より高度な光学性能を達成しています。ナノテクノロジーの進歩により、従来よりも薄い層を精密にデポジットすることが可能になり、透過率を最大化しつつ、反射を抑えることができます。また、拡散制御偏光フィルタリングといった追加機能を備えたマルチコーティングも開発されています。これらの最先端の技術により、光学機器の視認性、コントラスト、色再現性が向上し、より鮮明で鮮やかな画像を実現しています。

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