《千姫》京都伏見で誕生~7歳で豊臣秀頼の妻に…徳川家康がこよなく愛した孫娘の生涯【どうする家康】

豊臣と徳川をつなぐ最愛の孫娘

千姫 せんひめ
[原菜乃華 はらなのか]

秀忠と正室・江の長女。家康にとっては目に入れても痛くない最愛の孫娘。太閤秀吉の遺志に従い、7歳で秀吉の嫡男・秀頼に嫁ぐ。徳川と豊臣の懸け橋としての重責を負うことに。

※NHK大河ドラマ「どうする家康」公式サイト(登場人物)より

徳川家康の孫娘・千姫。徳川秀忠(家康三男)と江姫(浅井長政娘・茶々妹)の間に生まれた彼女は、わずか7歳で豊臣秀頼に嫁ぎます。

徳川と豊臣の両家を結ぶ懸け橋として重責を担った千姫は、どのような生涯を送ったのでしょうか。

徳川・豊臣両家の媒として

千姫の肖像(画像:Wikipedia)傍らに丸くなっている愛猫?や、置かれた煙管、見書台など優雅な暮らしぶりがうかがわれる。

千姫は慶長2年(1597年)4月11日、京都伏見(向島)の徳川屋敷で生まれました。

彼女の誕生を喜んだ秀忠は、産土神である御香宮神社に巨大な神輿を奉納します。

「千姫神輿」として現代に伝わるその神輿は、重量なんと六百貫(約2.3トン)。江戸時代に改修を経ているとは言え、元から同じくらいに立派だったはず。家康の愛情がいかに大きなものであったか、よく分かりますね。

ちなみにこの御香宮神社では叔父に当たる徳川義直(家康の九男)・徳川頼宣(同十男)や徳川頼房(同十一男)が産湯を使っており、千姫も産湯を使ったのではないでしょうか。

すくすくと成長した千姫は7歳となった慶長8年(1603年)、豊臣秀頼の待つ大坂城へ嫁ぎました。家康が征夷大将軍(江戸幕府初代将軍)となった年ですね。

幼いながら、豊臣・徳川両家の仲を取り持とうと努めた千姫。しかし二人の間に子供は授かりませんでした。

やがて月日は流れ、彼女が19歳となった慶長20年(1615年)5月に大坂城は陥落してしまいます。

何とか夫の秀頼と姑の茶々を助命するよう、千姫は家康に嘆願しました。しかしこの願いばかりは聞き入れられず、二人は炎上する大坂城と運命を共にしたのです。

千姫は悲しみにくれたことでしょう。しかし秀頼の血を引く娘を自分の養女とし、彼女だけは守り抜くことができました。

彼女は間もなく出家して天秀尼と称し、後に鎌倉・東慶寺(縁切寺)の住職となります。かくして豊臣・徳川両家の媒としての務めを終えたのでした。

豊臣家の滅亡後

千姫が再婚した本多忠刻(画像:Wikipedia)

その後は伊勢国・桑名藩主の本多忠刻(本多忠勝の孫)と再婚し、勝姫(池田光政正室)と幸千代(早世)を産みます。

そして本多家の転封によって姫路城へと移りますが、家中(夫・姑・母)に不幸が相次いだそうです。
このことから本多家に留まるのがはばかられ、実家である江戸城へ戻りました。

伏見で生まれ育った彼女にすれば、ほとんど初めての土地に感じたことでしょう。

そして出家して天樹院と号し、亡き夫たちの菩提を弔うのでした。

寛永20年(1643年)には養女の天秀尼が住職を務めた鎌倉・東慶寺(縁切寺として知られる尼寺)の伽藍を再建、救いを求める女性たちの保護に注力しています。

正保元年(1644年)に甥の徳川綱重(家光の三男)を養子に迎え、そのことによって大奥の運営に大きな影響力を有するようになりました。

そして寛文6年(1666年)2月6日、70歳で世を去ったのです。死因は肺炎と考えられています。

墓所は曾祖母・於大の方(家康生母)と同じ伝通院(東京都文京区)・弘経寺(茨城県常総市)・知恩院(京都府京都市)にあり、今も人々を見守っているのでしょうか。

終わりに

月岡芳年「魁題百撰相 秀頼公北之方(千姫)」

そんな千姫は今でも歴史ファンに高い人気があり、近年再び彼女を顕彰する動きが活発になっているとか。

例えば、彼女がかつて暮らしていた兵庫県姫路市では「姫路ゆかりの千姫」特別展示が開催され、彼女にゆかりのある品々(葵の紋がついた茶碗、打掛、小袖、羽子板など)が人々を楽しませました。

また、三重県桑名市でも「桑名の殿様御台所祭・千姫折鶴祭」が開催され、こちらも千姫を慕う人々の熱気がうかがわれます(現在は中止)。

こうした動きに負けじ?とばかり、千姫の故郷である伏見でも平成24年(2012年)以来途絶えていた千姫まつりを令和5年(2023年)に見事復活。

安土桃山時代を偲ばせる装束に身を彩った男女による千姫行列が、伏見城や御香宮神社をはじめ大手筋界隈を練り歩きました。

これからも、千姫が人々から末永く愛されますように。

※参考文献:

  • 京都学研究会 編『京都を学ぶ【伏見編】-文化資源を発掘する-』ナカニシヤ出版、2022年3月
  • 「THE伏見」編集部『京都を愉しむ 歴史でめぐる伏見の旅』淡交社、2015年9月
  • 三池純正『豊臣家最後の姫』洋泉社、2013年1月

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ライター:角田晶生