避妊用ピルは、女性が避妊目的で使用する医薬品です。
避妊用ピルの避妊効果は、適切に使用すれば約99%であり、コンドームによる避妊よりも避妊効果が高いです。なぜ薬を飲むだけで、ここまで高い精度で避妊できるのか気になりますよね?あ
ここでは、避妊用ピルがどのように避妊効果を発揮しているのかについてくわしく解説します。
妊娠には女性ホルモンのバランスが重要
避妊用ピルの話の前に、まずは妊娠が成立するために必要な条件について確認しましょう。
妊娠のためには、以下の3つのプロセスが必要です。
- 排卵
- 受精
- 着床
排卵は、卵子が卵巣から排出されることです。排出された卵子は卵管で精子との出会いを待ちます。
そして卵管で卵子と精子が出会い、卵子の中に精子が入ると受精の完了です。卵子と精子が融合したものを受精卵と呼びます。
受精卵は子宮の中の子宮内膜にもぐりこむことで成長していきます。子宮内膜は、ふわふわのベッドのようなものです。
これらの過程を経て妊娠は成立します。
そして、これらの過程において重要な働きをするのが、女性ホルモンです。女性ホルモンには、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類があります。
この2種類のホルモンが適切なタイミングで適量分泌されなければ妊娠は成立しません。
避妊用ピルで避妊効果が得られる仕組みを理解する
さきほどの章で、妊娠には女性ホルモンが関わっていること、女性ホルモンは排卵・受精・着床において重要な働きを担っていることを紹介しました。
そして避妊用ピルは、女性ホルモンのバランスを調整することで、排卵・受精・着床の過程を抑制します。
避妊用ピルには、2種類の女性ホルモンがそれぞれ少量含まれています。
例えば、病院で避妊目的で処方される避妊用ピルの1つに、マーベロン21という薬があります。このマーベロン21に含まれる成分を解説した文章が、以下の写真です。このなかの、「デソゲストレル」が黄体ホルモンで、「エチニルエストラジオール」が卵胞ホルモンです。
どの避妊用ピルにも同じように黄体ホルモンと卵胞ホルモンが含まれています。
そして、避妊用ピルでこれらのホルモンを摂取すると、人間のからだが「あ、女性ホルモンが体の中にあるから、これ以上女性ホルモンを出さなくていいんだ」と錯覚を起こします。その結果、体からの女性ホルモンの分泌を抑えることができて、妊娠しにくい体になるのです。
続いて、女性ホルモンの分泌の抑制がそれぞれの妊娠の過程に対してどのように影響するかについて具体的に解説します。
排卵が起きにくくなる
避妊用ピルを飲んで女性ホルモンの分泌が抑制されると、排卵が起きにくくなります。排卵が起きないと、精子は卵子に出会うことができず、妊娠は成立しません。
精子が子宮内に入りにくくなる
子宮の入り口には、感染予防などのバリア機能のために頸管粘液と呼ばれる粘液があります。この粘液があることで、外部からの異物の侵入を防いでくれるのです。
女性ホルモンの分泌量が変わると、この粘液の量や粘度に変化が現れます。その結果、精子の通りやすさが変わり、精子が子宮内に入りにくくなります。
子宮内に精子が入らなければ、妊娠が成立することはありません。
受精卵が着床しにくくなる
妊娠成立の最終工程は、受精卵の着床です。着床のためには、受精卵がベッドの役割を果たす子宮内膜にもぐりこむ必要があることを最初の章で紹介しました。
女性ホルモンの分泌量が減ると、子宮内膜を分厚くできなくなります。つまり、受精卵が育つベッドの環境が悪くなってしまい、着床しにくくなるのです。
避妊の効果は極めて高い
さきほど紹介した3つの効果で避妊を実現できる避妊用ピルですが、本当に効果があるのでしょうか。
前の章で写真を紹介したマーベロン21では、99.9%の避妊効果が認められています。
下にマーベロン21の臨床試験の結果を紹介します。992例のうち妊娠が認められたのはたったの1例です。
これはマーベロン21に限らず、ほかの種類の避妊用ピルでも同程度の避妊効果が認められています。
参考までに、コンドームによる避妊では、正しく使用した場合で妊娠率が2%と言われています。コンドームと比較しても避妊用ピルの避妊効果は高いことが分かりますね。
このように避妊用ピルは正しく服用すれば、極めて高い避妊効果が期待できます。
避妊用ピルは女性ホルモンのバランスを変化させて避妊する
避妊用ピルには女性ホルモンが2種類含まれています。これらのホルモンを少量摂取することで、体は女性ホルモンの分泌を減らしてしまいます。
女性ホルモンの量が減ると、1.排卵が起きにくくなる、2.精子が子宮内に入りにくくなる、3.受精卵が着床しにくくなる、の3つの効果により避妊できます。
これら3つの効果による避妊効果