豊臣秀吉も愛した「醍醐寺」の春の見どころは?

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桜の見頃や花見対策まで紹介

全国でも有数の酒処として、お酒のイメージが強い京都の伏見。実は、「桜の名所」が多く点在していることをご存知でしょうか?

特に、伏見の醍醐東大路町に位置する「醍醐寺」は、かの豊臣秀吉もその美しさに感銘を受けたほどの桜の名所として知られています。春のシーズンには見事な桜並木が醍醐寺を彩り、訪れる人々を魅了します。

本記事では、そんな醍醐寺の春の見どころや歴史について詳しく紐解き、さらに桜の見頃や2024年の桜まつりに関する情報までをお届けします。

「花の醍醐」醍醐寺とは?

京都の伏見に位置する醍醐寺は、真言宗醍醐派の総本山。平安時代初期の874年に、空海の孫弟子にあたる理源大師聖宝によって開創された歴史ある寺院です。

醍醐山に広がる約200万坪の広大な境内には、「五重塔」「地蔵菩薩蔵」などの国宝・重要文化財を含む約15万点の寺宝を所蔵しており、平成6年の12月には「古都京都の文化財」として世界遺産にも登録されました。

また、慶長3年の頃に、安土桃山時代の天下人「豊臣秀吉」が「醍醐の花見」を催した場所としても有名です。今でも、春になると境内に植えられている約700本の桜の木が約3週間かけて咲き誇り、訪れる人々は長い期間にわたり桜の美しい花々を楽しむことができます。

醍醐寺の歴史

醍醐寺の歴史は、874年に理源大師聖宝が上醍醐山で「醍醐水」と呼ばれる不思議な霊水を見つけ、そこに小堂宇を建てたことから始まりとされています。

その後、醍醐寺の噂が広まるにつれ、当時の三帝と呼ばれる「醍醐・朱雀・村上」が醍醐寺を信仰し始めるようになります。907年には醍醐天皇の願いにより薬師堂が建立され、五大堂も完成。これに続いて、下醍醐にも伽藍が計画され、926年には釈迦堂が建てられ、951年には五重塔までが完成したと言われています。

それから、醍醐寺は真言宗小野流の中心寺院として重要な場所となり、多くの密教芸術を生み出しました。平成6年12月には「世界文化遺産」に登録されており、その霊宝館には、国宝6棟や重文10棟を含む92棟の文化財が保管され、木や紙の文化の宝庫として世界的な価値が評価されています。

豊臣秀吉も愛した醍醐寺の桜の魅力

醍醐寺は、古都京都の文化財であると同時に、京都・伏見でも屈指の桜の名所として有名です。その美しさから、京都の「さくら名所100選」にも厳選されています。

特に、醍醐寺はかつて豊富秀吉が、息子の秀頼や正室の北政所、側室などの女房衆を1,300人招いて行った「醍醐の花見」で有名。この花見に際して、秀吉は境内に畿内から取り寄せた約700本もの桜の木を植え、そして、盛大な宴のための「三宝院庭園」を造ったと言われています。

現在でも春になると、しだれ桜、ソメイヨシノ、山桜、彼岸桜、八重桜などさまざまな種類の桜が境内の至る所に美しく咲き誇ります。特に醍醐寺の桜は3週間かけて咲くため、長い期間にわたって桜を楽しむことができ、その美しさが醍醐寺ならではの魅力となっています。

醍醐寺の桜の見頃はいつ?

美しい桜の花を満喫するためには、見頃をしっかりと把握し、訪れる時期を計画することが大切です。

醍醐寺の桜の見頃は、例年3月下旬〜4月の上旬に見頃を迎えます。昨年の2023年においても桜の開花は3月22日頃とされ、これは2022年の3月24日と比較しても2日ほどの誤差しかありませんでした。

早めに咲くしだれ桜などは散り始めも早めですが、おおよそ3月の29日頃には全山が満開となり、最高の桜日和となりそうです。

なお、現時点での2024年の開花予想では、4月上旬が見頃とされています。ただし、その年の気候による影響で、桜の開花時期、見頃も変動してくるので、日頃から醍醐寺の公式サイトや伏見の桜の開花状況をチェックしてみてください。

春は桜の見どころが充実

醍醐寺の春は桜の見どころが充実しており、その美しさは春の風情を醸し出しています。醍醐寺の境内には、ソメイヨシノ、枝垂れ桜、山桜、八重桜など、さまざまな種類の桜の木が植えられていますが、特に目を引くのは国宝や文化財と桜の美しいコントラストです。

以下では、醍醐寺の春にしかお目にかかれない、桜の見どころを4つご紹介します。

三宝院の太閣しだれ桜

醍醐寺の桜の中でも、特に見事なのが三宝院のしだれ桜。三法院とは、永久3年(1115年)に創建された醍醐寺の本坊的な格式高い寺院であり、豊臣秀吉が基本設計したとされる庭園は、国の特別史跡・特別名勝に指定されています。

春に咲く三法院の桜並木は「花の醍醐」の代名詞とも言えるほど美しいとされており、春になると多くの観光客で賑わいます。

特に、大玄関前に鎮座する樹齢150年のしだれ桜「太閣しだれ桜」が花咲く姿は圧巻の一言。この桜は、現代日本を代表する日本画家「奥村土牛」が自身の代表作「醍醐」でも描いたことから、別名「土牛の桜」とも称されています。

また、対岸には、太閤しだれ桜のクローン桜である「太閤千代しだれ」も立ち並び、春には太閤しだれ桜とクローン桜の見事な共演を楽しめます。

伽藍(がらん)の桜並木

醍醐寺の伽藍とは、金堂や五重塔、弁天堂などの国宝が並ぶエリアの総称です。国宝でもある金堂は、慶長3年に豊臣秀吉の命によって、紀州から移転されたもので、薬師如来坐像が安置されています。五重塔は、京都府下で、最も古い建物とされており、天暦5年に建立されました。

桜の見頃にこの伽藍エリアへと向かうと、満開の桜並木の中に、真っ先に立派な仁王門がお出迎え。その先に進むと、美しいソメイヨシノや山桜、しだれ桜に囲まれた国宝の金堂や五重塔の姿が目に映ります。

特に、五重塔のすぐ目の前の植木広場に咲くしだれ桜の並木は見応えが抜群。奥には樹齢100年を超える大しだれ桜もあり、五重塔との組み合わせは、醍醐寺のシンボルとも言える美しさです。

ちなみに、この伽藍エリアに咲く桜は、醍醐寺の中でも開花時期が例年早めとなっているので、3月の最終週までには一度足を運んでみるのがおすすめです。

霊宝館の醍醐大しだれ桜とソメイヨシノ

醍醐寺の霊宝館は、7万5千点以上の国宝や重文、その他文化財を合わせ、約10万点以上に及ぶ寺宝を収蔵している建物です。展示物のメインは国宝の薬師三尊像で、そのほかの展示物は展示替えによって、順に公開されていきます。

霊宝館の見どころとしては、樹齢180年を超える「醍醐大しだれ桜」。東西に24m、南北に20m広がるしだれ桜の大木で、枝の太さもあり、一つひとつの桜の花びらも大きいため、その姿を前にすると非常に迫力があります。2018年には台風21号の影響により、被害を受け、スケールは縮小したものの、未だその存在感は健在です。

霊宝館の見どころには、もうひとつ、京都下で最大・最古と言われる樹齢100年のソメイヨシノがあります。しかし、こちらも2018年の台風21号の被害により、根本から折れてしまったため、残念ながらかつての美しい姿を見ることはできません。ただ、折れた根本から新たに芽が生え始めてきているとのことなので、またかつての姿を取り戻してくれることが期待されます。

三宝院・霊宝館の夜桜ライトアップ

日の出る時間に見る美しい桜を見るのもいいですが、夜に出会うライトアップされた艶やかな夜桜も魅力的です。

醍醐寺で行われる桜のライトアップは、かつて東海旅客鉄道のキャンペーン「そうだ京都、行こう。」の会員限定で行われていたイベントでしたが、2021年からは一般公開が解禁となり、夜間特別拝観をすることが可能になりました。

ライトアップされるのは、境内全てではなく、主に三法院と霊宝館の2箇所のみ。夜に見る、醍醐大しだれ桜や三宝院の太閣しだれ桜の姿は、昼間とはまた違う幻想的な姿に変わり、非日常的な感覚を覚えます。

また、このライトアップでは、桜鑑賞だけでなく、霊宝館の時報鑑賞や、音楽演奏、さらにワンドリンクサービス付きという充実した内容となっているので、日中の拝観よりもお得感が倍増です。2024年の開催日は、3月23日土曜日で予定されているので、受付開始時間17:15分を目処に足を運んでみてください。

醍醐寺の桜まつり「豊太閣花見行列」について

醍醐寺では毎年4月の第2日曜日に、「豊太閣花見行列」と呼ばれる年中行事が開催されます。

この行事は、かつて豊臣秀吉が女房衆と共に行った「醍醐の花見」に倣った桜まつり。醍醐寺に縁のある著名人をはじめ約300名の参加者が、秀吉や北政所、淀君など歴史上の有名な人物に扮装し、行列を組みながら、境内を練り歩きます。

行列のコースは、三宝院唐門から始まり、桜馬場を通って金堂まで。金堂前には特設の舞台が設けられ、ここで舞楽や今様、狂言、花見踊りなどが見物されます。

もし雨天の場合でも、行列は金堂の回廊で行われるので、イベントが中止されることはありません。醍醐寺のこのイベントは、歴史の息吹を感じながら、美しい装束や伝統的な芸能に触れることができる、貴重な機会になることでしょう。

醍醐寺の花見対策

醍醐寺の花見シーズンにおける混雑状況や禁止事項について、以下にご紹介いたします。これらの対策を講じ、より一層花見を楽しむための心構えを持っていただければ幸いです。

混雑具合

京都屈指の桜の名所のため、1日中混雑が予想されます。かといって、境内はかなり広いため、自分のペースで見て回れないということはありません。

境内の見どころの三宝院・霊宝館・伽藍とすべて見てまわる場合は、おおよそ1時間30分〜2時間の所要時間がかかると予想されます。早めの訪問や混雑が緩和される平日の訪問を検討すると、ゆったりとした花見が可能です。

禁止事項(飲食の持ち込み・喫煙)

花見というと、舞い散る桜の木の下で酒を酌み交わし、持ち寄った食事をみんなで食べてにぎやかに楽しむのが醍醐味です。

しかし、醍醐寺では残念ながら「飲食の持ち込みが禁止」されているので、おしゃれな花見パーティーを計画される方は、事前に注意が必要です。食事をする際は、境内にある雨月茶屋や雨月恩賜館、五重塔近くの寿庵で弁当や軽食を済ますことができます。

また、禁止事項には喫煙も含まれています。これは、歴史的な建造物や美しい庭園を保護し、訪れる人々が清らかな空気と美しい景観を楽しむための措置ですので、ぜひルールを守り、配慮を持ってお花見を楽しんでみてください。

醍醐寺周辺の桜の名所5選

「醍醐の花見」の名所「醍醐寺」は言うまでもなく、その美しい桜が広がるスポットとして魅力的です。しかしながら、伏見には他にも見どころ満載の桜の景色が楽しめる名所が点在しています。

以下では、厳選された醍醐寺周辺の桜の名所・お花見スポットを紹介いたしますので、花見シーズンには是非足を運んでみてください。

城南宮 神苑「楽水苑」の紅しだれ桜

城南宮は創建から1200年もの歴史を重ねてきた古い神社です。本殿には、国常立尊、息長帯日売命、八千戈神の三神が祀られており、引越や工事、家相の心配を除く「方除け(ほうよけ)」の大社」と仰がれています。

城南宮は「しだれ梅」でも有名な花見スポットですが、神苑「楽水苑」に咲く「紅しだれ桜」も見どころの一つで、春には見事に咲き誇ります。時間が経過するにつれ、花の濃い紅色が次第に淡く変化し、庭園の風情と共に様々な趣を堪能できるでしょう。

墨染寺(ぼくせんじ)の墨染桜

墨染寺は、貞観16年(874年)に創建された日蓮宗の寺院です。別名「桜寺」「墨染桜寺」とも呼ばれる、伏見の穴場な桜の名所であり、境内には寺号の由来となる「墨染桜」が植えられています。

現在植えられている墨染桜は、元祖墨染桜の4代目となる子孫であり、まだ成長中の小ぶりな桜の木ですが、春には綺麗な薄紅色の花を咲かせてくれます。その他にも、境内にはソメイヨシノや八重桜、御衣黄など様々な桜の木が植えられており、春の美しい共演を楽しむことができます。

御香宮神社の紅しだれ桜

御香宮神社は、約1100年前に、境内から心地よい香りの湧き水が現れたことから、清和天皇によって名づけられた由緒ある神社です。本殿には、主祭神である安産の神様「神功皇后」をはじめ、「仲哀天皇」、「応神天皇」など六神が祀られており、「安産・子育ての社」とも呼ばれています。

春は、本殿東側に咲き誇る、ピンク色の濃い「紅しだれ桜」が見どころになります。境内には他にも、ソメイヨシノや山桜、陽光などさまざまな品種の桜が咲き誇り、特に本殿(重要文化財)・表門(重要文化財)・参道などの景観は見事と言われています。

伏見桃山城のソメイヨシノ

伏見桃山城は、文禄元年(1592年)に豊臣秀吉の隠居後の住居として建設されたお城です。現在伏見に見えるのは、かつて人気を誇った遊園地「伏見桃山城キャッスルランド」の模擬天守であり、今では伏見のシンボルとして保存されています。

春の時期には、城の周辺にソメイヨシノや紅しだれ桜が華やかに咲き誇り、美しい桜の光景を堪能することができます。例年、家族連れや多くの花見客で賑わうものの、駐車場が広大なため、ゆっくりと回遊できるのも魅力的な部分です。

淀水路(よどすいろ)の河津桜

淀水路とは、北の桂川と南の宇治川の中間に位置する水路です。全長は約2.5kmで幅は約10m、遊歩道も整備されており、サイクリングや散策を楽しむことができます。

また、淀水路は京都市内で唯一、「河津桜」の並木を見られるスポットとして知られています。地元住民の有志によって、2002年に水路沿いに2本の河津桜を植樹したのが河津桜の始まりとされており、現在は水路沿い約1キロ余りを200本の河津桜が彩ります。

早咲きとして知られる河津桜は、例年2月初旬の頃に咲き始めますが、通常の桜の約2倍の開花期間の長さがあるため、より長い期間桜の景色を楽しむことができます。

醍醐寺の概要

寺号醍醐寺
住所京都市伏見区醍醐東大路町22 
電話番号075-571-0002 
拝観時間夏期:3月1日〜12月第1日曜日まで      午前9時〜午後5時まで冬期:12月第1日曜日の翌日〜2月末日まで   午前9時〜午後4時30分まで※閉門時間30分前で受付終了(春期期間中は拝観時間の変更あり)
料金個人 大人 1,000円   中学・高校生 700円   ※印小学生以下は無料法人 大人20名以上 800円   中学・高校生20名以上 600円
アクセス京阪バス「醍醐寺前」「醍醐寺」下車すぐ地下鉄東西線「醍醐」駅下車、徒歩10分

まとめ

今回は、京都・伏見の桜の名所「醍醐寺」について、歴史や見どころ、桜の見頃までご紹介しました。

「花の醍醐」とも称される醍醐寺の春の姿は、京都・伏見を訪れるならぜひ一度は見ておきたい絶景です。また境内には、五重塔や三宝院、霊宝館など見どころもたくさんあり、桜とのコントラストも堪能できるでしょう。

醍醐寺は、京都市内からもアクセスしやすいので、桜の季節にはぜひ訪れてみてください。